vol.11
1979年、岩手県生まれ。双子の兄弟。ともに株式会社ヘラルボニー代表取締役Co-CEO。2019年、世界を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER
30
JAPAN」に選出。企業としては、2024年、世界最大級のグローバルピッチコンテスト・カンファレンス「スタートアップワールドカップ2024」日本代表選出。またルイ・ヴィトン、ディオールなど高級メゾンを傘下に収める、ファッション界最大の複合企業LVMH主催「LVMH
Innovation Award 2024」において世界1545社の中から、日本で初めてファイナリスト18社に選ばれ、「Employee Experience, Diversity &
Inclusion」カテゴリ賞を受賞するなど、現在内外の注目を浴びている。
写真:文登さん(左)崇弥さん(右)
“お客様の声”は、田屋にゆかりのある皆様にお話を伺う企画です。
第11回目は、株式会社ヘラルボニーの
松田文登さんと松田崇弥さんに
お話を伺いました。
「障害」という言葉に替わる「異彩」をキーワードに、福祉とビジネスにボーダーレスな文化を築きたい。そんな思いを込めて設立された、株式会社ヘラルボニー。起業の切っ掛けは、自閉症の兄、翔太さんの存在だ。「生まれた時からいる兄という存在があればこそ、ヘラルボニーを作りました。兄なしでは生まれなかったのは、紛れもない事実です」
兄を通して垣間見た「障害」や「福祉」へ注がれる社会からの目線に、文登さんと崇弥さんは違和感を覚える。福祉の新たな形。二人の中に目標が生まれた。社会人になった二人に転機が訪れる。るんびにい美術館(岩手県花巻市)で観た障害のある作家達の圧倒的な作品だった。作品の存在を多くの人に届けるには…。崇弥さんは、作品の商品化を思いつく。
商品化の第一号は、ネクタイに決まった。早速、文登さんは製造業への訪問を始める。しかし結果は思わしくなかった。ひと口に「作品をシルクの織り柄で忠実に表現する」といっても、これが難題なのだ。「シルクの織りで、複雑な絵を表現すること自体が難しいと言われました。ではどこならできるのか?」上がった名前が「銀座の田屋さん」だった。
崇弥さんが田屋を訪れ、サンプルが出来上がる。「初めて生地を見た感動は、今でも忘れられません。ネクタイを見た人は揃って、作品として感動しています」二人が思い描いた理想のクオリティが、実現したのだ。2018年、ヘラルボニーが正式に発足。二人のこだわりは、出身地岩手県にも注がれ、メディア等を通し、今や地元での認知度も絶大だ。
兄翔太さん、双子の文登さん、崇弥さんから始まった「異彩」の輪は、確実に広がりを見せた。現在ヘラルボニーは、海外も視野に入れ、世界を見据えた商品作りに取り組んでいる。内外での注目度も上がった。これからも、福祉のボーダーを超える時代の波となり、可能性を生む文化の担い手として、新たな領域を提供してくれるに違いない。