リポーター阿部祐二さんが田屋について語ってくださいました

リポーター阿部祐二さんが田屋について語ってくださいました


『銀座百点』5月号におきまして、リポーター阿部祐二さんが田屋について語ってくださいました。
天皇陛下の即位に伴う祝賀パレードという歴史的な場面で、田屋のネクタイを着けてくださり、大変光栄に存じます。
一部抜粋して転載致します。ぜひご覧くださいませ。

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私にとっての銀座   阿部 祐二

朝の喧騒にひと息つく空間、リラックス感を味わってもらいたいという事で、 いつもはノーネクタイでジャケット姿を標榜している私がつい先日、皇室関係の取材(十一月十日祝賀御列の儀のパレード)をする事になりました。 その時、ディレクターが私に言いづらそうに「阿部さんすみません、今度のパレード取材はネクタイと黒系スーツがドレスコードになっていますので宜しくお願いします」と言ってきました。
 私としてはよくある取り決めの一環だとして「OK」と快諾したものの、「あれ?ネクタイどこにしまい込んだかな?」と一瞬頭をよぎりました。「スッキリ!!」という情報番組が始まる前まではネクタイを身につける事も結構あったので数十本はあったのは記憶していましたが「どこに?」「いや、処分してしまったかもしれない」「バーゲン品の数々」「冠婚葬祭用ならすぐに出てくるかもしれない」。恥ずかしながらファッションの基軸にネクタイを考えてこないで六十一年間人生を歩んで来てしまったのです。
 しかし、歴史的な一日のリポートの場に立つリポーター阿部祐二が、しっかりとしたネクタイをしないわけにはいかないというプライドがあります。「さあ、どうしよう」と思いつつ、ここ二年間身近に感じて来た銀座通りをぶらついてみた所、百貨店、ブランドショップの数々、例えどこに入ってもそれなりのネクタイが手に入るというのはわかっていたのですが、どうも足が向かなかったのを覚えています。
 そんな時、銀座四丁目のネクタイ「田屋」の前を通りかがったのです。一瞬通り過ぎ「あ、そうだこの店があったではないか」という事で躊躇なく店の中へ入って行きました。
 入ってみて驚いたのは多種多様な品揃え、一つ一つのネクタイの重厚感、私はおそらく、用途、希望など言えばぴったりする物を提示してくれると一瞬にして感じたのです。これはリポーター歴二十六年の勘でもあります。
 私は「この店は信頼できる」と思ったら店の方に伺うことを常としているので早速「ちょっとすみません。ネクタイを探しているんですけど」と切り出すと、店の方は、「あ、いつも拝見してます、阿部さんですね。でも、いつもネクタイされてませんよね?」と言われ私は気分が良くなったのを覚えています。 「この方私の事を知ってくれてる」そこで私は「実は今度皇室関係の仕事がありまして、ドレスコード、ネクタイなので相談に来ました。おしゃれで個性的で、かつ見たことないような物ありますか?」と好き勝手な事を申し上げると即座に「このような物どうでしょう」と二、三点提示がありました。私はそのうちの富士山をデザインにあしらった一本のネクタイにものの五分で即決しました。
 その方の接客の仕方というのは言葉ではなかなか言い表せない来客への配慮、私共に感じさせる信頼、安定のあるものでした。
 昨今では「おもてなし」という言葉で表現することも多くなりましたけどこのような「おもてなし」こそ、まさに銀座通りが有する長年培ってきた歴史と伝統に根ざしたものなんだとつくづく感じました。
 話は元に戻りますが、ネクタイをしてリポートした私の姿を見て担当ディレクターが「阿部さん、今日はパリッとしてますね」と言って来ました。私は「今日は?」と少し「何?」と思うところはありましたが、まさに気分のいい歴史的な一日にすることができました。