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TAYA通信
田屋のネクタイを愛用する
お客様の声をお届けします。
vol.15
1960年、福島県会津若松市生まれ。東京大学理学部天文学科卒、博士課程中退後に理学博士号を取得。国立天文台副台長・上席教授を経て、現在は京都産業大学神山宇宙科学研究所長・特別客員教授。専門は太陽系小天体の観測研究のほか、天文学の普及活動にも力を注いでいる。
「お客様の声」は、田屋にゆかりのある
皆様にお話を伺う企画です。
第15回は、
天文学者の渡部潤一先生にお話を伺いました。
国立天文台で長く研究を続けられ、現在は京都産業大学で教鞭をとられている天文学者・渡部潤一先生。
ニュース解説などでもお馴染みの先生は、実は大変な「銀座田屋ファン」でもある。
今回、天文学・宇宙をモチーフにした新作ネクタイ3型が完成したことを機に、
先生に東京のお店までお越しいただき、ネクタイと天文学について存分に語っていただいた。
先生と田屋の出会いは、今から十年ほど前のこと。通販雑誌の企画で星座柄のネクタイを取り上げてもらった際に、先生にお話を伺ったのがきっかけだったという。
「田屋さんの星座柄のシャツも気に入って着ているんですが、あれを着ていくと必ず『どこで買ったんですか』と聞かれるんですよ」と先生。柄をプリントせず、糸を織って表現するのが田屋のシャツの特徴。先生は丁寧な縫製や、縫い目で柄をそろえる「柄合わせ」にも触れ、「機械だけでは出せない、職人の腕がかかっている」と評価してくださった。
先生が天文学の道へ進む転機になったのは、小学6年生だった1972年10月8日の夜のことだ。ジャコビニ流星群が「1時間に10万個」というスケールで見られると予測され、先生は学校の校庭で仲間たちと夜通し観測会を行った。
ところが、その夜は一つの流れ星も見えなかった。
「がっかりしたんですけど、逆に面白いなと思ったんです。偉い先生が『この日にたくさん出る』と予測した日に、まったく流れなかった。つまり、まだよく分かっていないということですよね。もしかしたら、予想もされていない時にたくさん出るのかもしれない」
この経験が、「自分でもフロンティアに立てるかもしれない」と、天文学への興味に火をつけたという。ちなみにこの夜のことは、松任谷由実さんの楽曲「ジャコビニ彗星の日」のモチーフにもなっている。
観測人生の中でもっとも印象深い出来事として先生が挙げたのが、1994年に彗星が木星に衝突した「シューメーカー・レヴィ第9彗星」の事件だ。事前に衝突が予測され、世界中の天文学者が集まって国際会議で観測体制を議論したが、衝突後に木星表面に黒い斑点ができると予言した者は誰一人いなかったという。
「実際にぶつかってみたら、目の前でみるみる黒い斑点ができていくのを観測したんです。すごく感激しましたね。同時に、これだけの天文学者が集まっても誰も予測できなかったのかと、我々はまだ何も分かっていないんだなと痛感しました」
先生はさらに、宇宙の95%は正体不明のダークエネルギー・ダークマターで占められていることに触れ、「何か力が働いているらしい、というところまでしか分かっていない」と語る。
分からないことが多いからこそ、今見えているものを記録し、次の世代に残す。先生は、17世紀の天文学者カッシーニが残した観測記録が、約400年後の現代になって解明のヒントになった例を挙げた。
「分からなくても、きちんと記録して次の世代に引き継ぐことが大事なんです。コペルニクスからケプラー、ニュートンへとつながってきたのも、まさにそういうことなんですよね」
先生が挙げたコペルニクス、ケプラー、ニュートン。その三人の名は、今回の新作ネクタイの一本にも刻まれている。完成したのはその一本(太陽系)と、四季の星座をそれぞれ描いたデザイン、星の軌跡(スタートレイル)をパネル柄にした一本の3型だ。
星座柄のネクタイ自体は、世の中に数多くある。それを承知の上で、先生は四季の星座の一本をひと目見るなり、こう評価してくれた。
「同じ星座モチーフでも、田屋のは品があるんですよ」
星柄ネクタイは往々にして子供っぽくなりがちで、締めるには派手すぎるものも多いのだという。
一方、先人の名が連なる一本には、研究者としての先生の思いも重なった。先人の発見や記録を次の世代へ引き継いでいく。先ほど先生が語ってくれた、天文学の歩みを思わせる一本だ。
先生が星座柄に惹かれるのは、星座が単なる美しい図柄ではないことを知っているからかもしれない。
星座はもともと、方位を知るための道具だったと先生は説明する。オアシスを渡り歩く砂漠の民や、ナイル川の氾濫の時期を見極めたい古代エジプトの人々にとって、星は生活そのものと結びついていた。だからこそ名前がつけられ、特徴が語り継がれ、星座という体系が生まれていった。
そうした背景を知る先生だからこそ、「品のある星柄」という評価には特別な重みがある。
そして3型の中で、先生が一番気に入ってくださったのが、星の軌跡(スタートレイル)をパネル柄にした一本。その撮影方法についても、先生は教えてくれた。
星々が同心円を描くこの柄は、銀塩写真の時代に、何時間もシャッターを開け続けて撮影されたものだという。現在は、短時間露出で撮った写真をデジタル処理する「比較明合成」でも、星の軌跡を描くことができる。撮影方法は違っても、そこには長い時間をかけて夜空を見つめる人の忍耐が重ねられている。
その成り立ちを語る先生の眼差しは、何十年も夜空を見つめ続けてきた研究者そのものだった。
何時間もシャッターを開け続けて浮かび上がった星の軌跡も、コペルニクスからニュートンへと受け継がれてきた発見の系譜も、時間をかけて積み重ねられてきたものだ。田屋もまた、昨年迎えた120年という歴史の中で、一針一針にその積み重ねを刻んできた。夜空を見上げるように、これからも田屋は、ネクタイという小さな宇宙に、次の時代への思いを紡いでいく。
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